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 といって、自分は窓の方へ歩いていった。  清里は、弓子にどうぞという身振りをした。 「それじゃ、入ってみましょう」  と弓子が留美を促して、二人は部屋へ入ってきた。  清里は、留美の固い顔をみて、またしてもまずい会い方をしたなと思った。 「もう紹介するまでもないわね、お互いに」  弓子が笑ってそういうので、清里は留美に頷いて、 「いらっしゃい」  といった。  案の定、留美は口元にかすかな笑いを浮かべて、黙って頭を下げただけだった。 「ここが、キッチンと呼ばれている部屋ですけどね、スタイリストの人たちにも、ロケに出かける支度なんかはこの部屋でして貰うことになります……」  弓子は、そんなふうに説明しながら、留美を連れて部屋のなかを歩き廻った。清里は、なぜ留美が不意に自分の社に現われたのかわからなくて、ぼんやり二人を眺めていたが、ふと気がつくと、いつのまにか瞭子が部屋からいなくなっていた。  瞭子が気を取り直してくれさえすれば、清里も、もうキッチンには用がなかった。 「じゃ、僕はこれで……」  二人の方へ手を上げて、そのまま戸口へ歩きかけると、 「あら、ちょっと待ってよ」  と弓子がいった。  二人は、清里の前に戻ってきた。
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