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偽物ビト ン長 財布編集

 部屋のなかにあったコンピュータのなかのゲームのなかにあった部屋のなかにあったゲームのなかにあった部屋のなかにあったゲームのなかにあったへやのなかにあったこんぴゅうたのなかのへやのゲームのなかのへやのげえむのへやのなかのげえむのこんぴゅうたのげえむのなかにあったげえむのこんぴゅうたのげえむのなかのへやのなかのこんぴゅうたのなかのげえむのなかのげえむのなかの——。  それを逆に辿《たど》って、最初の場所まで戻ったつもりだった。  そう。  ゲームの外に出たつもり。  だがもしかしたら、そう思っているのはおれだけで、実はまだそのなかにいるのではないか?  このおれというのは、現実のおれではなくて、あの入れ子構造の合せ鏡からまだ抜けだせていない、ゲームのなかの〈おれ〉なのではないか。  しがみつくように両手で机の縁を握りしめていた。  顎《あご》から、汗が落ちる。  おいおい。  小声で、つぶやいていた。  それにしても、これがゲームだとしたら、えらくリアルな描写じゃないか。  と。  机の上のマウスが、手を触れてもいないのに、動いた。  かた。  かたかたかた。  小刻みに揺れている。  その表面は濡《ぬ》れているように見える。  濡れた肉の色をしたマウス。
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