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null 男が拳銃の銃口をむけた。 「答えろ。亜希子が好きになった男というのは、どこの、どいつだ! 相手は誰だ!」 「さあね。あの美貌だ。寄ってくる男は多い。寝たのも、もう一人や二人ではないかもしれんな」  幾分、予想していたとはいえ、こういう男から、こういう局面で露骨な言い方をされると、慎平は眼の前が暗くなる。慎平の怒りがついに爆発する時がきたようだ。 「こんなもの、書いてたまるか!」  慎平は、便箋を破りざま、ペンを男の頬にむかってするどく投げた。よけたはずみに男は、体勢をくずした。立ちあがった慎平は男の股間に蹴りを飛ばした。顔面に風を巻いて慎平のストレートが炸裂(さくれつ)した。  男は、ソファから床にひっくりかえった。晴美の悲鳴が湧いた。吼(ほ)えて男は拳銃を構え直した。だがそれがモデルガンであることを見ぬいたからこそ、慎平はこの場の反撃に出たのだ。  起きあがろうとする男の顔に、二撃目の蹴りを入れた。晴美が電話のほうに走った。慎平は晴美の鳩尾(みぞおち)に拳を打ちこんだ。二人とも叩きのめすと、慎平は上衣とコートをつかんで部屋を飛びだした。  部屋代は払っている。長居は無用だった。ホテルを飛びだすと四ツ橋筋の広い通りに、眼を射るがごとき眩(まぶ)しい車のヘッドライトが洪水のように、流れていた。 3  一台の黒い、受話器がある。  慎平はいま、それを見ている。  何度も手をのばしては、引っこめる。  深夜だ。亜希子はもう東京に帰っているはずだ。寝ているだろうか。東京の亜希子に、慎平は電話をしたくてたまらないのである。 (亜希子に好きな男ができたらしい。そいつは誰だ。真偽を確かめねば……)