長財布ブランド
null
null「銃《じゅう》を持つもの前へ! 騎馬隊《きばたい》、迎撃《げいげき》戦闘《せんとう》!」  それは、歩兵集団の背後に控《ひか》える騎士《きし》たちの群である。 「来るぞ!」 「騎兵戦! 歩兵! 縦になれっ!」 「槍の陣形《じんけい》っ!」  ドレイク軍に走ったその新しい命令は、悲鳴に聞えた。  硫黄《いおう》の臭《にお》いが地を這《は》い、その異臭《いしゅう》が恐慌《きょうこう》と感情の激発《げきはつ》を呼んだ。  歩兵たちのなかには、衝動《しょうどう》的に後退するものもいたが、ガロウ・ランの放った硫黄を背負う馬の流す煙《けむり》が低く地を遮《さえぎ》って、壁《かべ》になった。  そして、突然《とつぜん》、目の前でその馬が四散する。 「歩兵! 縦になれっ! 槍の陣形だっ!」  さらに、騎兵たちの号令が、歩兵の背後を遮断《しゃだん》した。 「前だ! 前から突破《とっぱ》して、戦場から逃《に》げるんだ!」  兵たちの呼び合うそんな言葉も不謹慎《ふきんしん》には聞えなかった。歩兵たちは、突撃《とつげき》隊形の細い縦の陣形に変えながら、左右前方に楯《たて》を立てて、押《お》し出していった。 その間を、騎兵《きへい》が、長槍《ながやり》をかかえて突進《とっしん》を開始した。  騎士、誇《ほこ》り高く戦う者。  一般《いっぱん》の兵たちが逃げ出しても、それは平民ゆえに許される。しかし、いやしくも騎士たる者は、血を恐《おそ》れることなく戦いに臨む。  故に、彼等は貴族に準ずる者なのである。  ただし、戦功を得て、地位と賞金を得てからの話である。でなければ、誇《ほこ》りを飾《かざ》ることはできない。