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「そんなもん、生きてるから着られるんですよ。マダム」  最後にボーイの若林をひとりだけ連れた山脇船長がやって来たのを、舷門で待っていたラボリュー号の艦長が、両手を拡げて迎えると、そのまま抱きついてしまう。 「船長、今晩はゆっくり動かないベッドで寝て、明日か明後日の晩は、お誘いしますから一緒に一杯やりましょう」  貴方をアレキサンドリアにお連れしたことを自分は一生自慢するし誇りに思うだろうと、ラボリュー号の艦長は心を籠めて言った。 「有難う存じました。私もフランス海軍の勇敢な貴方達に助けられたことを、いつまでも語り続けることでしょう。乗客と乗組に替わって、御親切に厚くお礼を申します」  山脇船長は舷門に居た他の士官達とも握手をし、ゆっくりとしたフランス語で礼を言うと、ボーイの若林を従えてタラップを降りて行く。 「髭が剃れるほどよく切れる刀で敵を切り、負ければその刀で自分の腹を切り裂いて自殺する野蛮人だと聞いていたのに……」  あの日本人の船長と、それに乗組達は何とも言いようのない……と言うより、ケチのつけようもないほどの海の男だったと副長が呟いた。 「貴君のように口の悪い海軍士官がそう言うのだから、それ以上のお墨付きはないだろうな」  艦長が両掌を打ち合わせて、笑ってそう言ったので、舷門に居たラボリュー号の乗組は声をたてて笑った。 「俺達はまだ一隻もやっつけていないけど、大砲も爆雷も持っていなかったあの八坂丸の連中は、Uボートを一隻、舳先で突き壊して地中海の底に沈め、もう一隻は拳銃で潜望鏡を壊して、メロメロにしてしまったんだから、凄いもんだ」  砲術長の大尉が、茶色の髭を震わせてそう叫んだ。 「艦長、すぐ爆雷を補充して出港しましょう。日本人が潜望鏡を壊したUボートが、今頃は浮上して、トリエステに逃げ込もうとしているのを、追いかけて撃沈してやりましょう」  浮上しても十二ノットぐらいがせいぜいのUボートだから、全速力で追いかければ、アドリア海で捕まえられるし、潜行しても魚雷は撃てず逃げられもしないと、砲術長は猛り狂ったように叫ぶ。  手柄を立てれば昇進の望みも叶うから、若い職業軍人としては必死なのだ。 「全員救助したことで、俺達はフランス海軍……いや全軍で一番の大手柄だ。欲張るとロクなことがないぞ砲術長」  当分ドイツ野郎《ク ラ ウ ツ》は手を挙げないから、戦争は続く。Uボートを撃沈するチャンスは、まだ何十回もあると艦長は言った。  桟橋で待っていたイギリス海軍の高級士官は、タラップから降り立った山脇船長に歩み寄る。
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