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null「これで全部です。さあ、もう帰ってもいいでしょう」 「まあまあ、そう急ぐことはないでしょう。いまからじゃ、どうせ山形まで行くのは無理でしょうからな」 「そんなこと……」  浅見は呆れて、一瞬、絶句した。 「遅くなったのはあなたたちのせいじゃありませんか。こうなったら、意地でも今日中に山形へ行ってみせますよ」  浅見は憤然として立った。今度もまた、吉田の手が肩を押えようとしたが、それを払い除けた。 「おっ、あんた、抵抗する気かね」  吉田は、思うつぼにはまった——と言いたそうに、口を尖らせた。それまで木偶のように立っているだけだった伊原刑事も寄ってきて、浅見の腕を掴んだ。 「公務執行妨害の現行犯で逮捕する」  浅見は凝然として動かなくなった。心臓が凍りつくような想いがした。これが日本警察の現場の実体なのか——と情けなくなった。  戦後、刑事訴訟法が変わってから何十年にもなろうというのに、いまだに冤罪事件や誤認逮捕があとを絶たない。  つい先日も、東京御茶の水の女子寮に潜入した疑いで、まったく無関係の青年が逮捕・勾留され、自白を強要された。捜査員が入れ代わりたち代わり、自白し、調書にサインすればいいのだ——と宥めすかし責めたてたあげく、青年は疲労困憊のあまり、言われるまま署名捺印をしてしまった。  幸い、この事件は公判段階で、検察側が起訴を取り下げたが、裁判所は裁判を続行、逆に捜査当局側の失態をきびしく断罪した。しかし、その間に青年が受けた、精神的肉体的苦痛や、失った社会的信用を、警察はどう回復してくれるというのだろう。  公権力は強大であるがゆえに、それを行使する現場は、謙虚でなければならないはずではないか。  三人の警察官を眺めながら、浅見は言いたいことが山ほどあった。しかし、結局は何も言わないまま、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。      3